少々ネタバレありでいきます。
映画にもなり今度テレビドラマにもなるベストセラー「チームバチスタの栄光」の続編で、今回も医療を題材に扱ったミステリなんだけど、今回は前作のように割と一般的な体裁のミステリ（事件発生→犯人推理に奔走→手がかりを充分に得て解決に向かう）ではなく、変化球気味になってます。
誰が犯人かというのを推理するのには重きを置いていなく、どちらかというとどのようにして犯行が行われたかを証明することに重点が置かれています。
こういう形になっているわけは牧村という眼に腫瘍を患って入院している少年の哀しい意志が深く関わっていて、それがこの物語を形作ってます。
しかし解決方法が少々ウルトラC気味な能力が関わってくるのと、またあれが関わってくるのかよ！という気はしないでもないんですが、今回はミステリとしての面白さより、人物と物語重視なんだなと思うので自分としては十分楽しめました。
自分は本格ミステリと呼ばれる本なんて数えるほどしか呼んでないので、推理ロジックの妙よりも物語が面白ければいいやって考え方です。
やはり今回も”ロジカルモンスター””火喰い鳥”の異名を持つ厚労省の役人白鳥圭輔というキャラが暴走してます。前作のコンビである、白鳥の強烈な個性に翻弄されるワトソン役である（といっていいのか疑問はあるが）不定愁訴外来、通称・愚痴外来担当の田口公平、という図に加えて今作は警察庁から出向してきた”デジタル・ハウンドドック”と呼ばれる加納警視正とその部下の玉村警部補まで加わって、白鳥と加納が物語を引っ張りまくります。そして二人につき合わされる田口と玉村。
ちょうど白鳥田口と加納玉村が役割的に対になっている形です。翻弄する側とされる側コンビになっているという点で。
医療に関する問題にも勿論触れてはいるのだけど、それ以上に白鳥の、相手がお子様だろうが平気で口先でねじ伏せる大人げなさ＆ハッタリかましっぷりに思わず笑ってしまった。
本筋とは殆ど関係がないのだけどハイパーマン・バッカスの話に唐突に現れて唐突に論破していくというシーンがあって、相手が子供だろうと平気で知識とハッタリでねじ伏せるんです。
非常にマイペース、傍若無人でありながらコミカルな面もあり憎みきれないキャラで、このシリーズの面白さの何割かはこのキャラの造形にあるんじゃないでしょうか。
勿論、きちんとした物語が前提としてある上で、ですが。
その点もミステリ的な評価はどうか知りませんが、ミステリという器に上手く病院という舞台を絡めて、現代医療の問題も交えつつ個性的なキャラを配置してエンターテインメントとして仕上げてる良い作品でした。
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