新年感想1冊目はこの凄い作品から。
直木賞受賞とその年のミステリランキングを総なめにしたというのも頷けます。

直接的ではありませんが、ネタバレ的なものを含んでるので一応注意して下さい。

ガリレオシリーズ3作目という位置づけだけど、科学を用いて不思議なトリックを解明することに主観を置いていた短編の前2作とは異なり、本格的に物語が展開される長編ミステリ。

天才数学者でありながら不遇な日々を過ごしていた高校教師の石神は隣に住む花岡靖子に思いを寄せていた。だがある日、靖子の前にかつて花岡母娘を苦しめた別れた夫が現れ、母娘は前夫を殺害してしまう。
そのことを知った石神は花岡母娘のために計算し尽くした完全犯罪を試みる。
ある日、死体が発見され、その死体の身元が靖子の前夫であることが判明し、死体の状況から殺人であると判断された以上、当然靖子にも疑いがかかるのだが、石神の計算しつくした計画により、疑いはかかりながらも突き崩す証拠は何も出ない状況が作られる。

そんな中草薙刑事は捜査中、花岡母娘の隣に住む石神が帝都大学の出身であることを封筒から気づき、友人の湯川准教授に同窓がいるぞという話をしたところ、湯川と石神はかつて大学時代の友人であったことを聞かされる。
湯川は、自身が天才と認める友人の不遇な状況を聞き、石神に会いに行く。
しかし皮肉にもこれが湯川が石神の作った計算に挑むきっかけとなってしまう……

あらすじとしてはこんな所でしょうか。
今回は湯川&草薙コンビとはあまり言えない動きをしています。
湯川も草薙も独自に動く場面の方が多い。

犯人は最初から分かっている形式なので、それがどう突き崩されていくかというお話なのだけど、石神がどのような工作をしたかの大部分は読者にも分からないまま進んでいくため、石神はどうやって花岡母娘を警察の追求から逃れさせようとしたのか、推理する側の視点で進むことが多いため、単純に倒叙ミステリとも言えない。

この作品の凄いところは真実が明らかになったとき、石神がどれほどまでに花岡母娘に愛を注いでいたか、そのとてつもない深さと重さに驚かされ、感動さえすることでしょう。
タイトルどおり、その献身ぶりはまさに凄まじいとしか言いようがない。
それだけのことを石神はやってのけてます。
完全に計算し尽くして。
それは伏線の張り方と回収にしっかりと表れてきます。
あそこまで計算の一部だったのかと真相が明らかになったときは驚きました。
ただ石神の愛は、余りにも純粋で、重すぎたのだろうなと。
湯川の存在も誤算ではあったが、石神の計算に唯一綻びがあったとしたらそこでしょう。

正直「探偵ガリレオ」「予知夢」ともに短編というのもあるけど、トリック主体で物語は結構淡泊に進む印象だったんで、それほどこの作品に物語部分への期待はしていなかったし、実際中盤までは石神の仕掛けたトリックに翻弄されている状態で、このまま終わるのかなーと思ってたんですが、いい意味で裏切られました。
数々のベストセラーを生み出してきた実績は伊達じゃないですね。
機会があれば他の東野圭吾作品にも手を出してみようかなと思いました。

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SRO

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