「それ町」「木曜日のフルット」の石黒正数がおくる、SF風味のミステリ漫画。

ミステリ雑誌のメフィストに連載されていたためなのか、自分が普段活用してる月別の漫画発売予定表に載っていなくて発売日の21日に買えず、アマゾンのメールで存在を知ってあわてて注文して、今日ようやく届きました。

近未来的な世界を舞台に、最初の方は1話完結式のちょっとしたミステリをコメディで調理した、ちょっとした小話的な感覚で読める、作者の得意とする分野で相変わらず安定して読めるなーと思った。

しかし中盤以降は魅力を語ると壮絶なネタバレになるので避けるけれど、前半のどちらかといえばゆるめな雰囲気があれっ?と思って読み進める内に暗雲が立ちこめて、SFとミステリの両輪から展開していく物語は、そう持っていくか!と思わずにはいられなかった。
作者の別著である「ネムルバカ」なんかも前半はちょこっとした話から展開して、後半の急展開を超展開ぎりぎりのテンポで見せて1巻で完結させてたけど、それに似た感触があったりなかったり(どっちだ)
SF的な話の方は割とありがちな話なのだけど、それをミステリと上手く合致させている。
後半に向けての展開を、伏線は本当にさりげなく張っている程度で、それを序盤はミステリ小話的なもので覆い隠してるといったらいいのか。
うーむどう書いたらいいか分からなくなってきたぞ。

ともあれこれは実によいミステリ漫画ですよ。
ミステリつっても探偵系などの謎解きものではなく、もっと広い意味でのミステリだけれど、前半のコメディタッチにくすっとして、後半の急展開とラストに個人的にはぞくっとした感触を覚えました。
これも1巻完結なので、展開のカーブが結構ぎりぎりなのは否めないけれど素晴らしい短編じゃないでしょうか。
個人的には1巻完結はそのままでいいから、あと1話ぐらいのページは費やして欲しかったかなーと思うけど、短距離全力疾走の案配についてはこの作者は流石だと思った。

ただし、この作品を読んで面白くないと思う人がいても全然不思議ではないと思う。
いや、感じ方は人それぞれっていう普遍的なお題目的な事じゃなくて、上でも述べたけど結構な急展開を見せるので、それについていけねーって人がいてもおかしくないなぁと。

あと、それ町やフルットだけ読んでる人がこれを見たら驚くかもしれないけど、短編集とかではそういう一面もたまに見せてたよね。もっとも今回のは掲載紙によるものも大きいのかもしれないけど。


最後にどうでもいいこと。年代が進むにつれて絵が変化していくのは大ベテランや一部の例外を除いて当然のことだけど、それ町の1巻からこの前見返して思ったんですが、今は線が大分しっかりしてますね。それと共に微妙に昔よりキャラがデフォルメっぽく見える印象が。そんだけ。

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SRO

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