よくもまぁお手軽爽快感なゲームが当たり前な昨今に、ここまでストイックなゲームを出したものだ<挨拶

自分の感想を最初に述べると、このゲームは面白い。
しかし、クソゲー扱いしてしまう人も少なくないのではないだろうか、という感想も同時に発生した。


レイディアントシルバーガン、斑鳩、グラディウスVなどのSTGを手がけた元トレジャーの井内ひろし最新作。
任意スクロールのシューティング、なのだが性質は基本部分はシューティングであるものの、任意スクロールなためかアクション的な要素が多少存在する。
まず、このゲームの特徴として画面内に存在できる自機の攻撃は基本的に1発のみ。連射などというものはない。スペースインベーダーの時代まで逆行したオールドファッション。
LRボタンで攻撃方向を360度回転させることで、敵を狙い撃ちすることが基本となる。
ゲーム性がアクションっぽいというのはこちらの攻撃は画面内なら射程無限なのに対して、敵の攻撃は射程がばらばらでこちらより短い敵のほうが多かったりする。また、敵の攻撃を遮断する障害物が要所要所に設置されており、ヒットアンドアウェイを仕掛ける場面も作られている。
つまり位置取りと移動の仕方次第では一方的に攻撃を仕掛ける事が可能であり、そうすることで無駄な被弾を無くせる。

もちろん、それだけで終わったらストイックを通り越してただの前時代ゲームになってしまうのだけど、そこはやはり現代的要素がゲームに組み込まれている。
具体的にはカードシステム。
レーザー、ラピッド、スプレッドボムなどの通常攻撃を変化させるカードや、シールド回復、防御力アップ、攻撃力アップ、一定時間無敵などの補助効果を持つカードを使用することで攻略を組み立てていくのである。
カードは20枚固定でランダムに4枚が初期に配られ、1枚使うごとに1枚ランダムで配られる。
この辺割と運の要素が大きく、クリアを目指すだけならボスまでに有効カードを保持しておきたいのだが引きが悪くて上手いことカードが回転しなかったりするので難しい。

さて実際のゲームの流れは、普通のシューティングだと道中強制スクロール→中ボスが途中出たりして最後にボスを倒してステージクリア、というのが基本だが、このゲームは任意スクロール。しかもステージ選択制。
ではどうなるのかというと、まず12のステージから攻略するところを選択。
ステージを進めると要所にゲートキーパーというエリアをふさぐ敵が存在する。エリア内の雑魚を移動できる範囲内で倒しながら、ゲートキーパーを破壊して次のエリアに進み、それを繰り返して最奥までいくとボスにたどり着く。
ここで重要なのは、大体のステージは全てのゲートキーパーを倒す必要はない。
スコアを稼ぐのならばもちろん全滅させるのだが、ただクリアするだけなら最奥まで行ければいいので、それに沿ったゲートキーパーだけ破壊してルートを確保すればいいだけである。

ボスはまさに井内ゲー。移動範囲を狭められてその間で回避を強制されたり、毎度おなじみのボスレーザーを障害物で回避するギミックがあったり、通常攻撃ではダメージを与えられなくて、ボスが設置する地雷を爆破して当てることでダメージを与えたりと、とにかくギミックだらけ。ギミック好きにはたまらないが、適当に当ててもダメージにならないので好みが分かれそう。
また、設置型のボスはまだやりやすいのだが、移動するボスは自機の砲塔回転速度が微妙に遅いので移動に間に合わなかったりすることが多々あり多少ストレス。

ボスを倒すとステージクリアとなり、クリアしたステージと隣接したステージを選択できる。
ステージは三角形型に15ステージ配置されており、最初に選択できるのは三角形の頂点3ステージを除いた12ステージで、三角形の頂点三つはFINALステージとなっている。このFINALステージをクリアするとゲームクリア。
つまり、ただゲームをクリアするだけなら頂点の隣を最初に選び、次にFINALを選べばそれで終わる。
ただし、FINALステージ以外は難易度が4段階設定されており、最初にエリアに進入したときは難易度選択が可能。同じステージに再び進入することも可能でその際は難易度が一つ上以上に強制される。

なお、ステージでHP0の状態で被弾するとミッション失敗になるが、そのステージの最初からではあるが何度でもやり直しできる。


以上がこのゲームの大体の概要となる。
さてここからは自分の主観を多めに織り交ぜていくことにしよう。

井内ひろしが手がけるゲームだから絶対に一筋縄ではいかない尖ったコンセプトを持ったゲームであることは間違いないと思って、発売まで期待して待っていた。
実際に通販が届き、埃を被っていた3DSを起動させていざプレイしてみたら、ファーストインプレッションは、なんだこの恐ろしく地味なゲームは?だった。

グラフィックが地味ということではない。確かに高精細グラフィックというわけではないが、3DSのゲームとしては一定レベルは満たしていると思う。3D機能を使って表面が電子的、奥が自然的という階層を作り出していて、キャラクターを飛びだたせるのではなく背景を階層にするという立体視の使い方はこういうゲームでは上手いな、と思ったぐらいである。

では何が地味かというとやはり基本コンセプト。今時1発しか基本撃てなくて、狙いを定めて打つというのは時代に逆行しすぎていやしないか、と動かし始めたときにはそう思わずにはいられなかった。
なにせ雑魚敵ですら2発や3発打たないと倒せないのが結構いるのである。それを敵の攻撃を何とか回避しつつピシュン、ピシュンと攻撃するのだ。爽快感という言葉はどこへ行ったレベルである。

ではそれを補うためのカードシステムを使ったら評価が変わったかというと、それほど変わらなかった。補助カードは基本的に防御的なものなので、ここではウェポンカードに絞るが、とにかく効力維持時間が短い。
ウェポンカードで敵の群れを一気になぎ払うのを想像していたので、あっさり効果切れになり元の単発ショットに戻ったうえに敵が残ったり、使って敵を倒したはいいが次の敵の位置に移動するまで効果が持たなかったりと、1枚1枚の使い勝手がいいとは言いがたかったのである。

というわけで触って最初の30分ぐらいは、大丈夫なのかこれ?という疑問に対して自分を何とか納得させようと必死だった。

評価が変わってきたのは1時間ぐらいプレイして砲塔回転がある程度制御できるようになり狙い撃てるようになってきたのと、敵の攻撃や視野にある程度癖がありそれを利用すれば一方的な攻撃も可能であるということに気づいたあたりである。
あくまでコンピューター相手ではあるが、このゲームでの駆け引きに魅力を感じてきていた。
敵との間合いを計る、微妙な角度調整で正確に狙い撃つ、逃げ撃ちや障害物も駆使する。
はっきり言ってこれらの要素が地味なことに変わりはない。しかしプレイヤーが自機を制御できるようになってくると、非力な攻撃でも敵に対して微妙に優位に立てるのだ。この微妙というのがいい。圧倒的優位に立ちたいなら無双シリーズでもやってればいいし。ある意味RPGでの低レベル縛りに似たものがある、というと言い過ぎか。

もちろんそれだけではなくて、ファーストインプレッションではこれまた微妙だったカードシステムも見方が変わってきた。
当初は非力な火力から一気に大逆転システムみたいなのを想像していたので肩すかしを食らったが、通常攻撃の延長線上+αと考えて使っていくと、運用が大きく変わった。
まったく逆転要素が無いわけではないのだけど、大半のカードが補助的なものだと分かり、そして一部の、ボスや特定エリアで非常に効果的なカードとの区別が出来るようになって、どれを回してどれを残すかを選別することで運の要素を大きく減らすと同時に、そのことによる攻略への影響が最初に思ったのより格段にでかいことに気づかされた。


これらはゲームの方からわかりやすく提供される楽しさではなく、自分から何がこのゲームのエッセンスなのかを探っていかなければ見つけにくいものであり、そういう意味ではユーザーに優しくないゲームである。
最初に触った感覚が悪ければすぐユーザーに投げられてしまう事が多い昨今にこのようなゲームを出すのだから、開発者は実にチャレンジャーだ。

様々な要素をこれでもかと絞りながらも、完成度を落とさないで仕上げたのは見事。
ただ、やっぱり手放しで賞賛は出来ない。どうしても最初の取っつきが悪いのと、道中が冗長に感じることがあったり、ボスが自機の移動速度および砲塔回転速度にマッチしてない機動力を持ったのがいたりと、ややバランスの悪いところがある。
あとはダウンロードマルチプレイだけでなく、ネットワークプレイにも対応していれば、と思わずにはいられない。せっかく複数人で出来るゲーム設計なのにどうにかならなかったのか、と素人考えするのだが、設計上無理なのかもしれないのでこれはあくまで無い物ねだり。


最後に音楽。
コンポーザーは並木学。バトルガレッガや怒首領蜂大往生以降の多くのCAVEシューとかを作曲してる人。比較的最近だとブラックロックシューターのゲームも作曲してたかな。あとは怒首領蜂最大往生も。
このゲームでの基本ジャンルはプログレ。変拍子すればプログレってわけではないけどやっぱり変拍子する曲が多い。それでもやっぱり並木さんらしい曲と思えるあたりが並木節なんだろうな。
このゲームは前述したとおりゲートキーパーの破壊によってエリア進行するのだけど、一つのステージでもゲートキーパーの破壊がフラグになってたびたび音楽が変わるようになっている。
曲そのものに触れると、ベタで申し訳ないがテーマ曲の中の「哭牙」がやっぱりいい。テーマ曲はメロディを変形させたりリズムを変えたりして6曲あるのだけど、その中でもこの曲はゲームタイトルを使ってるだけあって肝心なところで盛り上げてくれる。ただ、どことなくメロディー進行が斑鳩の1面を思い出すけど狙ってやったのだろうか、とちょっと思ってしまう。



市場受けしにくい作品だとは思うが、こういうスタイルのゲームが少しぐらい無いと面白くない。
前述したとおり手放しでほめられる作品ではないが、たまにはわかりやすい爽快感とは縁遠い方向性を持ったゲームをやるのも一興だと思うのです。

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SRO

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